About kitabayashi

この作成者は詳細を入力していません
So far kitabayashi has created 6 blog entries.

【クリーンルームコラム】契約までに覚えておきたい!クリーンルームに関する10の用語

 

近年はさまざまな業種の工場、作業スペースで導入が進むクリーンルーム。取り扱う製品の品質保持はもちろんのこと、付加価値の向上、企業のイメージアップといった相乗効果も生み出しているようです。そんなクリーンルームの導入を考える際には「まず専門の会社へ相談しよう」と思いつくものですが、できれば契約をする前にしっかり基礎知識を理解しておきたいもの。とくに次に挙げた15の用語は覚えておきたいものです。

 

◆クリーンルームの「環境」に関する用語

 

まずは、クリーンルームの基本である環境に関する用語について、見ていくことにしましょう。

・クリーン度
=クリーンルーム内の空気がどれくらいきれい(清浄)かを表わす度合いのこと。クリーンクラス、清浄度ともいいます。
現在は1立方メートルの空間内に0.1μm以下の粒子(チリやホコリ)がいくつあるかで区分されているISO(国際統一規格)と、1立方フィートの空間内に0.5μm以下の粒子がいくつあるかで区分されている米国連邦規格の両方が使われています。
あらゆる業種で「空気がきれいなことに越したことはない」と思いがちですが、空気をきれいにする分だけコストがかかるため、自社が必要とするクラスを見極めていくことが大切です。

・HEPAフィルター
=High Efficiency Particulate Air Filterの略。JIS規格では「定格風量で粒径が0.3 µmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルター」とされています。これをFFUに取り付け、クリーンルーム外の空気を取り込み、清浄化してクリーンルーム内に循環させます。
さらにクリーンクラスの高い状態を保つために、HEPAフィルターよりもさらに厳しい基準(定格風量で粒径が0.15 µmの粒子に対して99.9995%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つ)に対応するULPA(Ultra Low Particulate Air)フィルターもより高いクラスで使用されています。

・コンタミネーション
=空気中のチリやホコリ、浮遊している微生物など。略称はコンタミ。コンタミが製品に混入した場合、異物や汚染源となることから、クリーンルーム外から入室する社員は「コンタミを持ち込ませない」「自らがコンタミを発生させない」ことが重要といえます。

・インダストリアルクリーンルーム
= メーカーの製造工程、検品を行う出荷前の工程などで、コンタミ混入を防ぐ目的で作られた場所。これに対し病院や研究施設などバイオテクノロジー分野で導入されるクリーンルームをバイオロジカルクリーンルームといいます。

・一方向流方式
=主に天井から下方へ向かって、一方向に空気を流す方式です。これによって密封性が低いクリーンブースであっても、空間内に清浄な空気をムラなく届けることができ、コンタミを室外へ排出することができます

 

◆クリーンルームの「設備」に関する用語

 

次にクリーンルーム導入のポイントとなる機器・設備に関する用語について、ご紹介します。

・FFU
=ファンフィルタユニットの略称。名前の通りファンとフィルターが一体化しており、主にクリーンルームの外の空気をフィルターで吸い込み、清浄化して、クリーンルーム内に循環させる形としている。加えて温度や湿度を制御できる高性能タイプもあり、目的にあわせて設置される。

・陽圧
=周囲と比べて、内部の気圧が高いこと。クリーンルームの場合、気圧差を生じさせることでコンタミが内部に侵入しにくくなるとともに、外部へと排出されやすくする効果が得られます。

・イオナイザー
=除電気のこと。放電をさせることで正負のイオンを発生させ、物質に帯びる静電気を打ち消します。コンタミは物質であるため静電気を帯びやすいため、静電気を帯電させないことが製品等への混入を防ぎます。ほかにも耐電防止機能がついたカーテンや服を使い、外部からのコンタミ混入を防ぎます。

・パーティクルカウンター
=微粒子計測器のこと。クリーンルームの設備としては、取り込んだ空気にレーザーを当てて粒子の数と大きさを電気信号によって計測する光散乱方式の採用例が多い。これで常時監視をしながら、必要なクリーン度になってから作業を行うようにします。

・クリーンブース
=専門会社によって定義が異なるものの、主に「クリーンルームより簡易なもの」「コンタミが発生しない塩ビなどの素材で間仕切りした空間」となっています。高度なクラスを求めない場合は、設置コストも比較的抑えられるクリーンブースの導入で十分という例も多く、最近ではクリーンブースを設置する会社も増えています。

・クリーンベンチ
=清浄な空気が循環する空間をつくることができる作業台のこと。主に手のみを動かす作業の場合に有効で、密封状態を作り出しやすく小規模であることから導入コストは比較的安めといえます。作業内容にあわせて湿度や温度を一定にする機能を付加したものもあります。

 

◆分野によっては関連する専門用語

 

最後にクリーンルームを必要とする特定の業種に関わる用語について、見ていきましょう。

オートクレーブ
=高圧滅菌器。主に医療等を目的としてバイオロジカルクリーンルームに設置し、作業で使う道具などを滅菌処理します。

クリーン服
=クリーンスーツ、無塵服とも呼ばれる作業用のユニフォームです。表面に毛羽立ちやホコリが生じないよう、特殊な加工や縫製を施しています。クリーン服の着用が必要なクラスでの作業となれば、エアシャワーなど前工程の設備、また作業するスタッフの専門教育も行うことが大切です。

HACCP
=食品の安全性を確保するための国際的な衛生管理手法です。食品工場では製造工程管理の点で、コンタミの混入を防ぐことが重要となっており、クリーンルームのノウハウや専用機器を生かした総合的な空調設備を導入することが大切です。

GMP
=製品が安全かつ一定の品質で製造できるようにした工程管理等のルール。とくに医薬品の製造現場で用いられています。GMPが求めるものも清浄度であるため、クリーンルームとは密接な関わりがあるといえるでしょう。

【クリーンルームコラム】はじめてクリーンルームを導入するときに注意したい3つのポイント

 

清浄な空気を循環させたクリーンルームやクリーンブースは、精密機器や食品工場、病院、研究所などさまざまな業種で導入されています。これは製品の品質向上、高付加価値化はもちろん、顧客からの安心・信頼の獲得、企業のブランド力向上、環境への負荷低減、事業リスクの軽減などに役立つことから、これまで必要としてきた業種はもとより、クリーンな環境が望ましいとされる幅広い業種にも注目されはじめています。そこで今回は、「自社でも導入したい」と考えている方に注意しておきたい3つのポイントをご紹介します。

 

ポイント1:目的を明確にしてマッチする仕様を決めていく

 

クリーンルームは使用目的によって、インダストリアルクリーンルーム(ICR)とバイオロジカルクリーンルーム(BCR)の二つに分けられます。
JIS規格(日本工業規格、 Japanese Industrial Standardsの略)の定義によると、インダストリアルクリーンルーム(ICR)は、「工業品の製造工程で用いるクリーンルームであって、 主に空気中における浮遊微小粒子が管理された空間」で、使用分野は「シリコンウェーハ、フォトマスク、半導体(基板工程・組立工程)、液晶、ハードディスク、プリント基板、精密機械など」です。
一方、バイオロジカルクリーンルーム(BCR)は、「主としてバイオテクノロジーの分野で用いられるクリーンルームであって、 主に空気中における浮遊微生物が管理された空間」であり、使用分野は「医薬品製造、病院、食品、飲料、化粧品、宇宙産業、バイオテクノロジー、遺伝子研究など」となります。
どちらのクリーンルームも高性能エアフィルターを使い、室内の空気をきれいにするという仕組みは共通しています。ただ、取り除きたい不純物(コンタミネーション、以下コンタミ)がゴミやホコリなのか、微生物なのかという違いがあります。
これらクリーンルームは、製品に求められるレベルが高い現場に導入されている場合がほとんどであり、規模も大がかりとなります。一方で、簡易にクリーンな空間を作り出すクリーンブースという選択肢もあります。導入時には、まず目的を明確にして、どれくらいの規模のクリーンルームが必要で、どれくらいの仕様がマッチするかを確認することが大切です。

 

ポイント2:複数の専門業者から話を聞いてみる

 

クリーンルームは、一般的な建設業者でも設計・施工を行うことは可能です。そのため、少しでも費用を安く抑えようと、自分たちで機器や部材、設備をメーカーから取り寄せて業者に依頼する企業も少なくありません。しかしながら、設備を導入したとしても、肝心のコンタミを取り除くために必要な前室や前工程が考慮されていないことから、設置した後で効果が得られない、逆にコストが割高になるというトラブルが起こってしまうこともあります。
これらを避けるためには、必ず専門業者に相談しましょう。専門業者に相談するメリットは、目的に合わせた仕様を提案してもらえるほか、クリーンルームの前室や前工程におけるコンタミ除去の強化、現場で作業するスタッフ等の人員配置やルールづくりまでを一括でコンサルティングしてもらえることです。とくに前室や前工程の見直しは重要で、設置コストを下げられる場合もあります。
また、業者は複数あたることがおすすめです。先ほども述べましたが、クリーンルームには使用目的によってインダストリアルクリーンルーム(ICR)とバイオロジカルクリーンルーム(BCR)の二種類があるほか、設備の規模も簡易的なもので十分な場合があります。業者によって得意分野があるので、おすすめの機器や設備の組み合わせを提案してもらい、さまざまな観点から自社に適したクリーンルームは何かをじっくりと検討しましょう。

 

ポイント3:作業するスタッフの教育を考える

 

クリーンルームは導入して終わりではありません。正しく管理・運用をすることではじめて力を発揮できます。そのため、作業に携わるスタッフの教育は大切です。
クリーンルームは、気密性を保った室内に空気を送り込むことで外部からの空気の流入を防いでいます。一方で、気密を保った特性上、流入もしくは室内で発生したコンタミは出ていきにくくなっています。そのため、エアシャワーの利用やクリーンウエアの着用、清掃の徹底などでコンタミの流入・発生を未然に防ぐ必要があります。特に、コンタミの発生源は人であることがほとんどなので、クリーンウエアの管理方法など、細かい部分まで注意が必要です。
いくら高価なクリーンルームを設置しても、スタッフがこのことを理解せずに作業マナーを守らなければ、コンタミ混入のリスクは急激に高まります。最悪の場合は品質問題に発展し、企業のイメージが悪くなる場合もあるでしょう。逆に、簡易なクリーンルームでも、作業時のルールを守ることはもちろん、前室でのコンタミの除去や、クリーンルーム内の清掃を徹底していれば、コンタミ混入のリスクを抑えることができます。
作業するスタッフに対しては、クリーンルームの4原則「ゴミを発生させない、ゴミを持ち込まない、ゴミを堆積させない、ゴミを速やかに除去する」を理解しもらい、普段から作業ルールを順守してもらうことが重要です。また、スタッフ任せにせず、定期的に作業の様子をチェックし、作業手順やレイアウトなどで、少しでも改善できるところがないか見直したり、スタッフを交えて話し合ったりする必要があるでしょう。

【クリーンルームコラム】クリーンルームは、一般の部屋となにが違うのか?

 

製造や食品、精密機器など、さまざまな業種の製造現場で活躍するクリーンルームやクリーンブース。いずれの業種でもクリーンルーム内の空気を常にクリーンに保てるように、一般的な部屋とは違った仕様となっています。では、クリーンルームは一般的な部屋と比べてどこが違うのかがわかる3つのポイントをご紹介します。クリーンルーム選びの際にぜひご一読ください。

 

POINT1:特殊フィルター&設備で循環する空気のクリーン度が違う!

 

クリーンルームは、特殊なフィルターを通した空気を常に循環させており、目に見えないチリやホコリをも浮遊していないクリーンな空気が維持される設計になっています。

この特殊なフィルターは、家庭用空気清浄機でも耳にするHEPAフィルター(HEPA=High Efficiency Particulate Air Filterの略)が使われており、定格風量で0.3マイクロメートルの粒子を99.97%以上捕集します。

また、クリーンルームに求められるクリーンクラスによっては、HEPAフィルターより上位のクリーン度を可能とするULPAフィルター(ULPA=Ultra Low Penetration Air Filterの略、0.3マイクロメートルの粒子を99.9995%以上捕集)を使うこともあります。

一方で、クリーンクラスが低いもので良いという場合には、HEPAフィルターより下位の準HEPAフィルター(0.3マイクロメートルの粒子を95%以上捕集)が使われることもあります。

こうした説明をすると、「それなら、すべてULPAフィルターを使えばよいのでは?」と思われるかもしれません。しかし捕集率が高く、目が細かいフィルターは、空気がフィルターを通過するときに流れがさまたげられて抵抗が生じてしまうことから、空気の循環を促すファンもより性能が高いものにしなければなりません。また、フィルターの目詰まりも起きやすくなることから、目的にあったクリーンクラスの設定とフィルター選びが不可欠です。

 

POINT2:クリーンルーム内の気圧がルーム外と違う!

 

クリーンルームは、チリやホコリが浮遊する外気(汚染空気)がルーム内に流入してコンタミが混入することがないよう、常にルーム内を陽圧に保っています。

この陽圧とは、気圧が高い状態のことを指します。気圧は水と同様に、高いところから低いところへ流れるため、クリーンルーム内の気圧を高めることによって、ルーム外の空気が混入しないようにしているのです。また、コンタミ混入の原因であるチリやホコリをクリーンルーム外へ排出する機能もあります。

クリーンルームを含め、複数の部屋を持つ大きな工場などでは、クリーン度が一番高い部屋が圧力も一番高くなるよう、圧力勾配を計算されて工場全体を設計するようです。

ちなみに、クリーンルームの室内と室外の気圧差は、5~15 ヘクトパスカル程度を維持することが望ましいといわれています。これよりも気圧差が小さいと、汚染空気がクリーンルーム内に持ち込むリスクが発生するのです。一方で、気圧差が大きすぎると部屋を仕切る扉の開閉が困難になったり、作業員に不快感が生じたりするなどの問題が発生します。

そのため、クリーンルームの多くは陽圧ダンパー(リリーフダンパー)を設置して、一定の差圧以上になったら室内から外へ空気を逃がし、差圧が一定になるよう管理・調整をしています。これを差圧管理といいます。

また、気圧とともに温度や湿度をが一定になるよう管理をする場合もあります。これはコンタミ防止という機能性だけでなく、製品の品質保持などを目的としたケースです。

適正な差圧調節を維持することは、クリーンルームの基本的かつ重要なポイントです。クリーンルームの規模が大きくなればなるほど、差圧管理は難しくなります。そのため、クリーンルームとともに簡易クリーンブースを設置し併用するケースもあります。

 

POINT3:ルーム内の服装、使用する道具が違う!

 

クリーンルームは、クリーンクラスに対応した設備を導入することが不可欠ですが、あわせてクリーンルーム外からチリやホコリを持ち込まない、あるいはクリーンルーム内でチリやホコリを浮遊させないよう、作業者も工夫することがコンタミ防止をより確かなものにします。具体的には、身につける服装や使用する道具にも細心の注意を払うべきでしょう。

まずは服装です。これは作業員自身がチリ・ホコリの発生源とならないよう、全身を覆うクリーンウェア(防塵服)とマスク・手袋を着用します。靴下も十分な長さのものを着用し、目の部分のみが露出している状態が望ましいでしょう。

また、異物混入の原因となるため、作業員はメイク・ネイル、アクセサリーの着用を禁止される事業所も少なくありません。同様に、クリーンウェアの内側に身に着ける服についても、ボタンやスパンコールの付いたものは不可とされることがあります。

さらにクリーンルームは常に空気を循環しているため、湿度が低く、静電気が発生しやすい環境といえます。静電気によって帯電すると、空気中のホコリを引き寄せてしまいますから、静電気を起こしやすいセーターの着用は避けたいものです。

次に、使用する道具です。そもそもルーム内には、不必要なものを持ち込まないのが鉄則です。その上で、必要な道具についても、チリやホコリの原因にならないものを選ぶべきでしょう。

たとえば紙は、短い繊維や、白く見せるための顔料粉末が発塵の原因となるため、普通紙を使うことはできません。クリーンルームでは、長い繊維をしっかりと絡め、さらに樹脂に浸して接着性を高めたクリーンペーパー(無塵紙)を使用します。

また、筆記具についても、細かな粉末が発生する鉛筆やシャープペンシルは使用できません。代わりにボールペンを使用するようにしましょう。

 

まとめ

 

ここまでの通り、クリーンルームは一般的な部屋とは異なる空間にするため、設備を揃え、システムを構築し、さらに作業員教育を行うことが大切です。それらのノウハウを総合的にもつ専門業者と相談をしつつ、確実に目的を達せられるクリーンルームを設置していくことが大切でしょう。

【クリーンルームコラム】クリーンルームの起源と歴史

最先端の技術を駆使しながら空気を清浄化するクリーンルーム。そのイメージから「クリーンルームは近年にできたものでは?」と思いがちですが、実は半世紀以上の歴史があるのです。ここではクリーンルームの起源と変遷、近年の状況を見ていくことにしましょう。

 

軍需産業から生まれたクリーンルーム

 

製品の製造、また製品を動作させる際にコンタミが悪影響を及ぼすことは、ずいぶん昔から認知されており、それらを除去する機構や付属品を用意するということも20世紀より以前から散見できます。ただ、各種産業の技術レベルから推測されるのは、コンタミといっても目に見えるレベル、または集積すればわかるレベルでの話であり、それ以下のチリやホコリを除去しようという発想はそれほど強くなかったと思われます。

それが、1940年代に入り、製造部門においてほこりなどの少ない清浄な環境整備の重要性が認識されはじめます。その契機となったのが、第二次世界大戦の開戦です。

当時、アメリカ軍は軍事用レーダーを開発しており、第二次世界大戦が開戦した翌年には複数の艦艇にレーダーを導入していたようです。こうした通信・電子機器は軍事的に有用であるとの判断で開発され、実用化また量産化されていきましたが、時に過酷な環境下におかれる戦場にあっては、頻繁に故障をするものであり、その修理代はもとより、いざというときに使えないということの経済的損失はとても大きいものがありました。多くの国防予算が費やされる現状を危惧した軍は、レーダーを含む通信・電子機器が故障する根本的原因を究明しようと取り組みを進め、結果、製造過程における浮遊粒子状物質の混入が問題と判明しました。そして、清浄な環境の整備を重要視するようになり、クリーンルームの構想が生まれていったのです。

 

HEPAフィルターもマンハッタン計画から誕生

 

近年では家庭用空気清浄機でもよく使われているHEPA(high efficiency particulate air)フィルターも、同じ頃に開発されたものです。歴史では「マンハッタン計画」と称される軍拡競争において、「放射性粉塵用エアフィルター」として考案され、誕生しました。これによって第二次世界大戦が勃発している最中にあって、アメリカではHEPAフィルターを搭載したプレハブの部屋をクリーンルームとして設置されていったのです。
クリーンルームができたことによって、アメリカでは製造した軍事用レーダー、また他の通信・電子機器のことで、製造したレーダーなどの故障率が激減したとされています。そして終戦後は、各種産業において重要性が広く認識されるようになりました。

 

日本では1980年代に普及、半導体産業の飛躍に貢献

 

第二次世界大戦が終結したあと、アメリカでは米国航空宇宙局(NASA)のアポロ計画や半導体の開発・高技術化に伴って、製造工程でのクリーンルーム利用が広がっていきました。そのため、アメリカ国内では米国連邦規格(Federal Standard)が設けられ、アメリカ以外の国・地域でも同規格を用いて導入が進みました。現在においても同規格が慣習的に用いられているのは、そうした理由があるようです。
さて、日本では戦後の高度経済成長期を経て、1980年代には製造工程でのクリーンルーム設置の重要性が知られるようになりました。とくに半導体産業では、世界の先進国と比肩するまで高技術化が進み、やがてはアメリカと世界を舞台に覇権を争うようになりました。一説によると、こうした競争を可能とした背景には、日本の半導体製造部門においてクリーンルームやクリーンレベル維持の環境整備が徹底されたことで、歩留まりが向上したことが一因となっているともいわれてます。
その後、日本でも1989年にJIS規格「クリーンルーム中における浮遊微粒子の濃度測定方法及びクリーンルームの空気清浄度の評価方法」(JIS B 9920)が制定に。さらには1999年に、クリーンルームの国際規格ISO14644-1が制定となりました。
2000年代以降は、家庭用空気清浄機の普及によって、空気の清浄化は身近な存在となってきました。クリーンルームも各種産業で重要視されるようになり、歩留まりはもとより会社の価値向上、ブランディングにも生かされています。また、これまでクリーンルームを活用する分野も増えており、簡易ブースや他の機能性へのニーズが高まっています。

【クリーンルームコラム】クリーンクラスと設備・機器のいろいろ

「不良品の発生率を下げるため、異物対策を強化することになった」「ラインの増設により、既存のクリーンルームでは対応が困難になった」など、さまざまな理由があってクリーンルームを設置することが必要となります。そんな時にまず考えるのが、クリーンクラスです。作業空間内で要求されるクリーンクラスを満たすことが肝心ですが、だからといって過度な設備導入は避けたいところ。ここでは、クリーンクラスと設備・機器についての解説、導入時に考慮するべきポイントを考えていきましょう。

 

クリーンクラスって何?どうやってクラスが決まるの?

 

クリーンルームは

「空気中に浮遊するほこり等の不純物(コンタミネーション)などが、あらかじめ決められた数値以下になるよう管理されている区切られた空間」

と定義することができます。

 

このコンタミがどのくらい少ないかを示す度合いが、クリーンクラス(清浄度)です。

クラス分けとしては、JIS規格やISO規格も存在しますが、

よく使われるのは米国連邦規格(Fed.Std.209D)です。

 

この米国連邦規格では1 立方フィートあたりに浮遊する微粒子の数を指します。

ただし、微粒子の大きさは0.5マイクロメートル以上とされており、

空気中に浮遊する微生物やウイルス、蒸気、煙に含まれる物質などは除外されます。

 

さて、クリーンクラスは微粒子の数によって、以下の通り称されます。

1個=クラス1

100個=クラス100

1000個=クラス1000

10000個=クラス10000

そしてクラスの数が小さいほどコンタミが少ない、清浄度合いが極めて高いことになります。

クラス1という高いクリーンクラスは半導体工場、

具体的にはシリコンウエーハのパターン形成におけるナノ単位のエッチング加工など、

超精密な加工機器が用いられる加工工程で求められます。

 

クラス100は精密機器や電子部品、光学機械などの製造現場、

食品・薬品などの加工現場などがあてはまります。

 

クラス1000以上となると、印刷や自動車等の部品製造、病院の治療室や手術室などが

おおむね当てはまるといったイメージです。

また、業種や製品にかかわらず、原料の性質や工程の精密さによっても

求められるクリーンクラスは大きく異なることがあります。

 

歩留まりの向上、異物混入対策など

「クリーンルーム設置で達成したい目的、目標」をまず明確にしたうえで、

それらにあったクリーンクラスがどの程度かを見極めることが大切です。

 

 

クリーンクラスを創り出す設備・機器のいろいろ

 

それでは、必要なクリーンクラスに最も大きな影響を与える

設備・機器についてみていきましょう。

 

一般的にも知られているのは、フィルターと吸排気設備です。

最近では家庭用の空気清浄機にも取り付けられていますが、

HEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)フィルターが有名です。

 

ちなみにHEPAフィルターは、ガラス繊維製の濾紙で、

「定格風量で粒径が0.3 µmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルター」

とJIS規格で規定されています。

 

高いクリーンクラスを維持するには、

HEPAフィルターに代表される高性能フィルターを効果的に用いること、

また適切な維持管理を行うことがまず重要となります。

 

加えて、陽圧(外よりも圧力を高める)にするOA供給設備、陽圧ダンパー等も

クリーンクラスを高めるためには効果的です。

 

また、ルーム内でのほこりの発生・体積を抑える室内構造を作るため、

壁や天井に断熱パネルやクリーンクロスを張る、

長尺の塩化ビニールシート等を床に敷く

といった施工も行います。

 

さらに付帯的な設備として、

作業者自身がほこりを持ち込まないためのエアシャワーボックス

などが必要なことも。

また、湿度や温度、気圧を調整する設備・機器も、作業する内容によっては

設置を検討することになります。

 

クリーンクラスを維持していくには、単にクリーンルームを設置するだけでなく、

総合的に設備・機器を備も含めて検討しなくてはなりません。

ただ、要求される内容がハイレベルになると、その分だけ設備投資額が大きくなります。

 

 

適切な維持・管理は、コスト削減にも効果あり!?

 

クリーンルームは一般的な建材とは異なり、代替がきかないことも多くあります。

そのため、コストを削減する選択肢も限られてしまうと思われがちです。

 

ただ、ハイレベルでのクリーンクラスを要求されない場合は、

工事を最小限にとどめることができる簡易クリーンルーム、クリーンブース等も検討できます。

 

また、ランニングコストについては、交換用フィルターがコスト全体の大部分を占めますから、

交換頻度を下げるためにも、クリーンルーム周辺の清掃を定期的に行う、

クリーンルーム入室者を対象にコンタミ教育を徹底する

といった地道な活動こそ、効果を発揮するといえるでしょう。

 

また、工場によってはパーティクルカウンタ(微粒子計測器)を用いて

クリーンルーム内を定期的に測定し、コンタミの状態を確認しているケースもあります。

 

単に設備を整備して終わりではなく、そのクリーンルームがクリーンクラスを維持し、

適切に管理されているかを定期的に点検し、見直すことは重要です。

 

それは製造工程に対する顧客の信頼性を向上させるだけでなく、

より効率的で低コストに維持管理ができる可能性もあるからです。

 

クリーンルームを設置する際には、

求められるクリーンクラスを維持しつづけるためのソフトな仕組みづくりも含めて

システムを選択し、構築する方がよいといえるでしょう。

【クリーンルームコラム】3つのキーワードから学ぶ「クリーンルームとは?」

「クリーンルーム」と聞くと多くの方が、食品や精密機械といった工場、病院や研究所といった場所を思い浮かべることでしょう。これら現場では、クリーンルームが不可欠な存在であり、高品質な製品の生産、企業としての信頼・ブランド力向上、周辺環境への負荷低減、事業リスクの軽減などに大きく役立っています。また「クリーンルームの中に入ったことがない」という人でも、クリーンルームという部屋の存在や機能性は広く認知されています。このコラムでは、クリーンルームを管理されている方、今後設置を検討される方のために、基本的なことがらを3つのキーワードからまとめてみました。みなさまと一緒に、クリーンルームについて学んでいくことにしましょう。

 

キーワード1:クリーンクラス

クリーンルームは、JIS規格(日本工業規格、 Japanese Industrial Standardsの略) で定義された言葉です。

定義から条件をピックアップしてみると、

  1. コンタミネーションコントロールが行われている
  2. 限られた空間
  3. 空気中における浮遊微粒子、浮遊微生物が限定された清浄度レベル以下に管理
  4. その空間に供給される材料、薬品、水などについても要求される清浄度が保持されている
  5. 必要に応じて温度、湿度、圧力などの環境条件についても管理が行われている空間

となります。

 

ここで何度か出てくるワードが「清浄度」です。

清浄度とは、空気中に浮遊するほこり等の不純物(コンタミネーション)がどれだけ少ないかを示す度合いのこと。

 

ちなみにクリーンルームを提供するメーカー等は、

「クリーンクラス」「クリーン度」と一般的によりイメージしやすい表現を使っていますが、すべて同義語です。

このコラムではクリーンクラスを用います。

 

さて、クリーンクラスを表す基準はJIS規格、ISO規格などがありますが、

慣習的に以前から使われている米国連邦規格(Fed.Std.209D)をよく用います。

 

これは1立方フィートあたりに浮遊する微粒子(0.5マイクロメートル以上)の数によってクラス分けをします。

例えば、1立方フィート当たりに1個ならクラス1、100個ならクラス100、1万個ならならクラス10000となります。

 

つまり、クリーンクラスの数が小さいほど、クリーン度が高いということになるのです。

そして、クリーン度を高くするためには、空気を清浄する度合いを高めることが必要になり、

その分だけコストがかかるということになります

 

ここで、必要とされる産業分野とクリーンクラスの一例を挙げると

・クラス1000~=印刷、自動車等の部品製造、病院の治療室・手術室など

・クラス100~=食品、薬品、精密機器、電子部品、光学機械などの工場

・クラス1=半導体工場

という区分になります。

 

世間ではよく「大は小を兼ねる」とか「機能性は高いに越したことはない」といいますが、

クリーンルームはクリーンクラスに比例して機能・コストとも高くなっていくため、

設置時には目的にマッチするクリーンクラスがいくらかをあらかじめ調べておくことが重要です。

 

キーワード2:環境負荷&コスト効率

クリーンルーム内の空気を常にクリーンな状態に保つには、

・外からコンタミを持ち込ませない

・内でコンタミを発生させない、蓄積させない

・内にあるコンタミを上手に排除する

ことが重要です。

これを効率良く行うために、空気を循環させたり、高機能フィルタを使用したりしますが、

いずれにしても動力源となる電気等を相当量使うことになり、環境負荷は避けられません。

 

ただ、これは現場の一工程のみを比較してのもので、

製品のLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)をトータルで見ていくと、

コンタミ混入による「作り直し」や「不良品の破棄」がなくなることは

大きく環境負荷を抑制することにつながります。

 

また、クリーンルームを設置・活用することで、

冒頭に記した通り企業のブランド力向上、また製品の高付加価値化につながる可能性があります。

 

たとえば、クリーンルームの使用が必須ではない分野のメーカーが、

出荷時に「クリーンルーム内で、一つ一つ目視で検品をして出荷しています」という情報を発信すれば、

顧客への信頼や満足度の高まることでしょう。

この場合は簡易クリーンルームやクリーンブース程度の規模で十分といえます。

 

さらには、こうした点を企業として意識することで、社員の意識向上、組織力の向上も期待できます。

 

キーワード3:前室&前工程

クリーンルームの設置については、一般的な設計・施工業者でも可能です。

部材や機器、設備をメーカーから取り寄せて設置するケースも少なくありません。

 

ただ一方で、設置コストが高くなるケースが散見されます。

これはクリーンルームの設置のみに終始してしまうことが原因です。

 

専門業者は、本来の目的である「コンタミの混入防止」を実現するために、

クリーンルームの設置だけでなく、クリーンルームの前室や前工程におけるコンタミ除去の強化、

また、現場で働くスタッフ等の人員配置やルールづくりまでを

トータルでコンサルティングすることができるからです。

 

とくに前室や前工程の見直しは、

クリーンルーム自体の設置コスト低減にもつながる可能性が大いにあるのです。

 

例えば高機能なクリーンルームを設置したとしても、

スタッフがルールを守らずに作業をしてしまえばコンタミ混入のリスクは高まります。

 

対して、簡易クリーンルームであっても、作業時のルール遵守はもとより、

徹底して前室でコンタミを除去したり、定期的なクリーンルーム内の清掃をしたりすることで、

リスクを低減することができるでしょう。

 

また、作業者の近くへの空気循環をスポット的に行える機器を導入すれば、

さらにリスクを抑えることができるのではないでしょうか。

 

クリーンルームの設置を検討される際は、

こうした機器や設備の組み合わせ、スタッフ等の体制をトータルでコンサルティングできる

専門業者に相談しながら、確実な生産・作業環境を構築していくことが大切です。

Go to Top