【クリーンルームコラム】はじめてクリーンルームを導入するときに注意したい3つのポイント

 

清浄な空気を循環させたクリーンルームやクリーンブースは、精密機器や食品工場、病院、研究所などさまざまな業種で導入されています。これは製品の品質向上、高付加価値化はもちろん、顧客からの安心・信頼の獲得、企業のブランド力向上、環境への負荷低減、事業リスクの軽減などに役立つことから、これまで必要としてきた業種はもとより、クリーンな環境が望ましいとされる幅広い業種にも注目されはじめています。そこで今回は、「自社でも導入したい」と考えている方に注意しておきたい3つのポイントをご紹介します。

 

ポイント1:目的を明確にしてマッチする仕様を決めていく

 

クリーンルームは使用目的によって、インダストリアルクリーンルーム(ICR)とバイオロジカルクリーンルーム(BCR)の二つに分けられます。
JIS規格(日本工業規格、 Japanese Industrial Standardsの略)の定義によると、インダストリアルクリーンルーム(ICR)は、「工業品の製造工程で用いるクリーンルームであって、 主に空気中における浮遊微小粒子が管理された空間」で、使用分野は「シリコンウェーハ、フォトマスク、半導体(基板工程・組立工程)、液晶、ハードディスク、プリント基板、精密機械など」です。
一方、バイオロジカルクリーンルーム(BCR)は、「主としてバイオテクノロジーの分野で用いられるクリーンルームであって、 主に空気中における浮遊微生物が管理された空間」であり、使用分野は「医薬品製造、病院、食品、飲料、化粧品、宇宙産業、バイオテクノロジー、遺伝子研究など」となります。
どちらのクリーンルームも高性能エアフィルターを使い、室内の空気をきれいにするという仕組みは共通しています。ただ、取り除きたい不純物(コンタミネーション、以下コンタミ)がゴミやホコリなのか、微生物なのかという違いがあります。
これらクリーンルームは、製品に求められるレベルが高い現場に導入されている場合がほとんどであり、規模も大がかりとなります。一方で、簡易にクリーンな空間を作り出すクリーンブースという選択肢もあります。導入時には、まず目的を明確にして、どれくらいの規模のクリーンルームが必要で、どれくらいの仕様がマッチするかを確認することが大切です。

 

ポイント2:複数の専門業者から話を聞いてみる

 

クリーンルームは、一般的な建設業者でも設計・施工を行うことは可能です。そのため、少しでも費用を安く抑えようと、自分たちで機器や部材、設備をメーカーから取り寄せて業者に依頼する企業も少なくありません。しかしながら、設備を導入したとしても、肝心のコンタミを取り除くために必要な前室や前工程が考慮されていないことから、設置した後で効果が得られない、逆にコストが割高になるというトラブルが起こってしまうこともあります。
これらを避けるためには、必ず専門業者に相談しましょう。専門業者に相談するメリットは、目的に合わせた仕様を提案してもらえるほか、クリーンルームの前室や前工程におけるコンタミ除去の強化、現場で作業するスタッフ等の人員配置やルールづくりまでを一括でコンサルティングしてもらえることです。とくに前室や前工程の見直しは重要で、設置コストを下げられる場合もあります。
また、業者は複数あたることがおすすめです。先ほども述べましたが、クリーンルームには使用目的によってインダストリアルクリーンルーム(ICR)とバイオロジカルクリーンルーム(BCR)の二種類があるほか、設備の規模も簡易的なもので十分な場合があります。業者によって得意分野があるので、おすすめの機器や設備の組み合わせを提案してもらい、さまざまな観点から自社に適したクリーンルームは何かをじっくりと検討しましょう。

 

ポイント3:作業するスタッフの教育を考える

 

クリーンルームは導入して終わりではありません。正しく管理・運用をすることではじめて力を発揮できます。そのため、作業に携わるスタッフの教育は大切です。
クリーンルームは、気密性を保った室内に空気を送り込むことで外部からの空気の流入を防いでいます。一方で、気密を保った特性上、流入もしくは室内で発生したコンタミは出ていきにくくなっています。そのため、エアシャワーの利用やクリーンウエアの着用、清掃の徹底などでコンタミの流入・発生を未然に防ぐ必要があります。特に、コンタミの発生源は人であることがほとんどなので、クリーンウエアの管理方法など、細かい部分まで注意が必要です。
いくら高価なクリーンルームを設置しても、スタッフがこのことを理解せずに作業マナーを守らなければ、コンタミ混入のリスクは急激に高まります。最悪の場合は品質問題に発展し、企業のイメージが悪くなる場合もあるでしょう。逆に、簡易なクリーンルームでも、作業時のルールを守ることはもちろん、前室でのコンタミの除去や、クリーンルーム内の清掃を徹底していれば、コンタミ混入のリスクを抑えることができます。
作業するスタッフに対しては、クリーンルームの4原則「ゴミを発生させない、ゴミを持ち込まない、ゴミを堆積させない、ゴミを速やかに除去する」を理解しもらい、普段から作業ルールを順守してもらうことが重要です。また、スタッフ任せにせず、定期的に作業の様子をチェックし、作業手順やレイアウトなどで、少しでも改善できるところがないか見直したり、スタッフを交えて話し合ったりする必要があるでしょう。

【クリーンルームコラム】クリーンルームは、一般の部屋となにが違うのか?

 

製造や食品、精密機器など、さまざまな業種の製造現場で活躍するクリーンルームやクリーンブース。いずれの業種でもクリーンルーム内の空気を常にクリーンに保てるように、一般的な部屋とは違った仕様となっています。では、クリーンルームは一般的な部屋と比べてどこが違うのかがわかる3つのポイントをご紹介します。クリーンルーム選びの際にぜひご一読ください。

 

POINT1:特殊フィルター&設備で循環する空気のクリーン度が違う!

 

クリーンルームは、特殊なフィルターを通した空気を常に循環させており、目に見えないチリやホコリをも浮遊していないクリーンな空気が維持される設計になっています。

この特殊なフィルターは、家庭用空気清浄機でも耳にするHEPAフィルター(HEPA=High Efficiency Particulate Air Filterの略)が使われており、定格風量で0.3マイクロメートルの粒子を99.97%以上捕集します。

また、クリーンルームに求められるクリーンクラスによっては、HEPAフィルターより上位のクリーン度を可能とするULPAフィルター(ULPA=Ultra Low Penetration Air Filterの略、0.3マイクロメートルの粒子を99.9995%以上捕集)を使うこともあります。

一方で、クリーンクラスが低いもので良いという場合には、HEPAフィルターより下位の準HEPAフィルター(0.3マイクロメートルの粒子を95%以上捕集)が使われることもあります。

こうした説明をすると、「それなら、すべてULPAフィルターを使えばよいのでは?」と思われるかもしれません。しかし捕集率が高く、目が細かいフィルターは、空気がフィルターを通過するときに流れがさまたげられて抵抗が生じてしまうことから、空気の循環を促すファンもより性能が高いものにしなければなりません。また、フィルターの目詰まりも起きやすくなることから、目的にあったクリーンクラスの設定とフィルター選びが不可欠です。

 

POINT2:クリーンルーム内の気圧がルーム外と違う!

 

クリーンルームは、チリやホコリが浮遊する外気(汚染空気)がルーム内に流入してコンタミが混入することがないよう、常にルーム内を陽圧に保っています。

この陽圧とは、気圧が高い状態のことを指します。気圧は水と同様に、高いところから低いところへ流れるため、クリーンルーム内の気圧を高めることによって、ルーム外の空気が混入しないようにしているのです。また、コンタミ混入の原因であるチリやホコリをクリーンルーム外へ排出する機能もあります。

クリーンルームを含め、複数の部屋を持つ大きな工場などでは、クリーン度が一番高い部屋が圧力も一番高くなるよう、圧力勾配を計算されて工場全体を設計するようです。

ちなみに、クリーンルームの室内と室外の気圧差は、5~15 ヘクトパスカル程度を維持することが望ましいといわれています。これよりも気圧差が小さいと、汚染空気がクリーンルーム内に持ち込むリスクが発生するのです。一方で、気圧差が大きすぎると部屋を仕切る扉の開閉が困難になったり、作業員に不快感が生じたりするなどの問題が発生します。

そのため、クリーンルームの多くは陽圧ダンパー(リリーフダンパー)を設置して、一定の差圧以上になったら室内から外へ空気を逃がし、差圧が一定になるよう管理・調整をしています。これを差圧管理といいます。

また、気圧とともに温度や湿度をが一定になるよう管理をする場合もあります。これはコンタミ防止という機能性だけでなく、製品の品質保持などを目的としたケースです。

適正な差圧調節を維持することは、クリーンルームの基本的かつ重要なポイントです。クリーンルームの規模が大きくなればなるほど、差圧管理は難しくなります。そのため、クリーンルームとともに簡易クリーンブースを設置し併用するケースもあります。

 

POINT3:ルーム内の服装、使用する道具が違う!

 

クリーンルームは、クリーンクラスに対応した設備を導入することが不可欠ですが、あわせてクリーンルーム外からチリやホコリを持ち込まない、あるいはクリーンルーム内でチリやホコリを浮遊させないよう、作業者も工夫することがコンタミ防止をより確かなものにします。具体的には、身につける服装や使用する道具にも細心の注意を払うべきでしょう。

まずは服装です。これは作業員自身がチリ・ホコリの発生源とならないよう、全身を覆うクリーンウェア(防塵服)とマスク・手袋を着用します。靴下も十分な長さのものを着用し、目の部分のみが露出している状態が望ましいでしょう。

また、異物混入の原因となるため、作業員はメイク・ネイル、アクセサリーの着用を禁止される事業所も少なくありません。同様に、クリーンウェアの内側に身に着ける服についても、ボタンやスパンコールの付いたものは不可とされることがあります。

さらにクリーンルームは常に空気を循環しているため、湿度が低く、静電気が発生しやすい環境といえます。静電気によって帯電すると、空気中のホコリを引き寄せてしまいますから、静電気を起こしやすいセーターの着用は避けたいものです。

次に、使用する道具です。そもそもルーム内には、不必要なものを持ち込まないのが鉄則です。その上で、必要な道具についても、チリやホコリの原因にならないものを選ぶべきでしょう。

たとえば紙は、短い繊維や、白く見せるための顔料粉末が発塵の原因となるため、普通紙を使うことはできません。クリーンルームでは、長い繊維をしっかりと絡め、さらに樹脂に浸して接着性を高めたクリーンペーパー(無塵紙)を使用します。

また、筆記具についても、細かな粉末が発生する鉛筆やシャープペンシルは使用できません。代わりにボールペンを使用するようにしましょう。

 

まとめ

 

ここまでの通り、クリーンルームは一般的な部屋とは異なる空間にするため、設備を揃え、システムを構築し、さらに作業員教育を行うことが大切です。それらのノウハウを総合的にもつ専門業者と相談をしつつ、確実に目的を達せられるクリーンルームを設置していくことが大切でしょう。

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