「クリーンルーム」と聞くと多くの方が、食品や精密機械といった工場、病院や研究所といった場所を思い浮かべることでしょう。これら現場では、クリーンルームが不可欠な存在であり、高品質な製品の生産、企業としての信頼・ブランド力向上、周辺環境への負荷低減、事業リスクの軽減などに大きく役立っています。また「クリーンルームの中に入ったことがない」という人でも、クリーンルームという部屋の存在や機能性は広く認知されています。このコラムでは、クリーンルームを管理されている方、今後設置を検討される方のために、基本的なことがらを3つのキーワードからまとめてみました。みなさまと一緒に、クリーンルームについて学んでいくことにしましょう。

 

キーワード1:クリーンクラス

クリーンルームは、JIS規格(日本工業規格、 Japanese Industrial Standardsの略) で定義された言葉です。

定義から条件をピックアップしてみると、

  1. コンタミネーションコントロールが行われている
  2. 限られた空間
  3. 空気中における浮遊微粒子、浮遊微生物が限定された清浄度レベル以下に管理
  4. その空間に供給される材料、薬品、水などについても要求される清浄度が保持されている
  5. 必要に応じて温度、湿度、圧力などの環境条件についても管理が行われている空間

となります。

 

ここで何度か出てくるワードが「清浄度」です。

清浄度とは、空気中に浮遊するほこり等の不純物(コンタミネーション)がどれだけ少ないかを示す度合いのこと。

 

ちなみにクリーンルームを提供するメーカー等は、

「クリーンクラス」「クリーン度」と一般的によりイメージしやすい表現を使っていますが、すべて同義語です。

このコラムではクリーンクラスを用います。

 

さて、クリーンクラスを表す基準はJIS規格、ISO規格などがありますが、

慣習的に以前から使われている米国連邦規格(Fed.Std.209D)をよく用います。

 

これは1立方フィートあたりに浮遊する微粒子(0.5マイクロメートル以上)の数によってクラス分けをします。

例えば、1立方フィート当たりに1個ならクラス1、100個ならクラス100、1万個ならならクラス10000となります。

 

つまり、クリーンクラスの数が小さいほど、クリーン度が高いということになるのです。

そして、クリーン度を高くするためには、空気を清浄する度合いを高めることが必要になり、

その分だけコストがかかるということになります

 

ここで、必要とされる産業分野とクリーンクラスの一例を挙げると

・クラス1000~=印刷、自動車等の部品製造、病院の治療室・手術室など

・クラス100~=食品、薬品、精密機器、電子部品、光学機械などの工場

・クラス1=半導体工場

という区分になります。

 

世間ではよく「大は小を兼ねる」とか「機能性は高いに越したことはない」といいますが、

クリーンルームはクリーンクラスに比例して機能・コストとも高くなっていくため、

設置時には目的にマッチするクリーンクラスがいくらかをあらかじめ調べておくことが重要です。

 

キーワード2:環境負荷&コスト効率

クリーンルーム内の空気を常にクリーンな状態に保つには、

・外からコンタミを持ち込ませない

・内でコンタミを発生させない、蓄積させない

・内にあるコンタミを上手に排除する

ことが重要です。

これを効率良く行うために、空気を循環させたり、高機能フィルタを使用したりしますが、

いずれにしても動力源となる電気等を相当量使うことになり、環境負荷は避けられません。

 

ただ、これは現場の一工程のみを比較してのもので、

製品のLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)をトータルで見ていくと、

コンタミ混入による「作り直し」や「不良品の破棄」がなくなることは

大きく環境負荷を抑制することにつながります。

 

また、クリーンルームを設置・活用することで、

冒頭に記した通り企業のブランド力向上、また製品の高付加価値化につながる可能性があります。

 

たとえば、クリーンルームの使用が必須ではない分野のメーカーが、

出荷時に「クリーンルーム内で、一つ一つ目視で検品をして出荷しています」という情報を発信すれば、

顧客への信頼や満足度の高まることでしょう。

この場合は簡易クリーンルームやクリーンブース程度の規模で十分といえます。

 

さらには、こうした点を企業として意識することで、社員の意識向上、組織力の向上も期待できます。

 

キーワード3:前室&前工程

クリーンルームの設置については、一般的な設計・施工業者でも可能です。

部材や機器、設備をメーカーから取り寄せて設置するケースも少なくありません。

 

ただ一方で、設置コストが高くなるケースが散見されます。

これはクリーンルームの設置のみに終始してしまうことが原因です。

 

専門業者は、本来の目的である「コンタミの混入防止」を実現するために、

クリーンルームの設置だけでなく、クリーンルームの前室や前工程におけるコンタミ除去の強化、

また、現場で働くスタッフ等の人員配置やルールづくりまでを

トータルでコンサルティングすることができるからです。

 

とくに前室や前工程の見直しは、

クリーンルーム自体の設置コスト低減にもつながる可能性が大いにあるのです。

 

例えば高機能なクリーンルームを設置したとしても、

スタッフがルールを守らずに作業をしてしまえばコンタミ混入のリスクは高まります。

 

対して、簡易クリーンルームであっても、作業時のルール遵守はもとより、

徹底して前室でコンタミを除去したり、定期的なクリーンルーム内の清掃をしたりすることで、

リスクを低減することができるでしょう。

 

また、作業者の近くへの空気循環をスポット的に行える機器を導入すれば、

さらにリスクを抑えることができるのではないでしょうか。

 

クリーンルームの設置を検討される際は、

こうした機器や設備の組み合わせ、スタッフ等の体制をトータルでコンサルティングできる

専門業者に相談しながら、確実な生産・作業環境を構築していくことが大切です。