近年はさまざまな業種の工場、作業スペースで導入が進むクリーンルーム。取り扱う製品の品質保持はもちろんのこと、付加価値の向上、企業のイメージアップといった相乗効果も生み出しているようです。そんなクリーンルームの導入を考える際には「まず専門の会社へ相談しよう」と思いつくものですが、できれば契約をする前にしっかり基礎知識を理解しておきたいもの。とくに次に挙げた15の用語は覚えておきたいものです。

 

◆クリーンルームの「環境」に関する用語

 

まずは、クリーンルームの基本である環境に関する用語について、見ていくことにしましょう。

・クリーン度
=クリーンルーム内の空気がどれくらいきれい(清浄)かを表わす度合いのこと。クリーンクラス、清浄度ともいいます。
現在は1立方メートルの空間内に0.1μm以下の粒子(チリやホコリ)がいくつあるかで区分されているISO(国際統一規格)と、1立方フィートの空間内に0.5μm以下の粒子がいくつあるかで区分されている米国連邦規格の両方が使われています。
あらゆる業種で「空気がきれいなことに越したことはない」と思いがちですが、空気をきれいにする分だけコストがかかるため、自社が必要とするクラスを見極めていくことが大切です。

・HEPAフィルター
=High Efficiency Particulate Air Filterの略。JIS規格では「定格風量で粒径が0.3 µmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルター」とされています。これをFFUに取り付け、クリーンルーム外の空気を取り込み、清浄化してクリーンルーム内に循環させます。
さらにクリーンクラスの高い状態を保つために、HEPAフィルターよりもさらに厳しい基準(定格風量で粒径が0.15 µmの粒子に対して99.9995%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つ)に対応するULPA(Ultra Low Particulate Air)フィルターもより高いクラスで使用されています。

・コンタミネーション
=空気中のチリやホコリ、浮遊している微生物など。略称はコンタミ。コンタミが製品に混入した場合、異物や汚染源となることから、クリーンルーム外から入室する社員は「コンタミを持ち込ませない」「自らがコンタミを発生させない」ことが重要といえます。

・インダストリアルクリーンルーム
= メーカーの製造工程、検品を行う出荷前の工程などで、コンタミ混入を防ぐ目的で作られた場所。これに対し病院や研究施設などバイオテクノロジー分野で導入されるクリーンルームをバイオロジカルクリーンルームといいます。

・一方向流方式
=主に天井から下方へ向かって、一方向に空気を流す方式です。これによって密封性が低いクリーンブースであっても、空間内に清浄な空気をムラなく届けることができ、コンタミを室外へ排出することができます

 

◆クリーンルームの「設備」に関する用語

 

次にクリーンルーム導入のポイントとなる機器・設備に関する用語について、ご紹介します。

・FFU
=ファンフィルタユニットの略称。名前の通りファンとフィルターが一体化しており、主にクリーンルームの外の空気をフィルターで吸い込み、清浄化して、クリーンルーム内に循環させる形としている。加えて温度や湿度を制御できる高性能タイプもあり、目的にあわせて設置される。

・陽圧
=周囲と比べて、内部の気圧が高いこと。クリーンルームの場合、気圧差を生じさせることでコンタミが内部に侵入しにくくなるとともに、外部へと排出されやすくする効果が得られます。

・イオナイザー
=除電気のこと。放電をさせることで正負のイオンを発生させ、物質に帯びる静電気を打ち消します。コンタミは物質であるため静電気を帯びやすいため、静電気を帯電させないことが製品等への混入を防ぎます。ほかにも耐電防止機能がついたカーテンや服を使い、外部からのコンタミ混入を防ぎます。

・パーティクルカウンター
=微粒子計測器のこと。クリーンルームの設備としては、取り込んだ空気にレーザーを当てて粒子の数と大きさを電気信号によって計測する光散乱方式の採用例が多い。これで常時監視をしながら、必要なクリーン度になってから作業を行うようにします。

・クリーンブース
=専門会社によって定義が異なるものの、主に「クリーンルームより簡易なもの」「コンタミが発生しない塩ビなどの素材で間仕切りした空間」となっています。高度なクラスを求めない場合は、設置コストも比較的抑えられるクリーンブースの導入で十分という例も多く、最近ではクリーンブースを設置する会社も増えています。

・クリーンベンチ
=清浄な空気が循環する空間をつくることができる作業台のこと。主に手のみを動かす作業の場合に有効で、密封状態を作り出しやすく小規模であることから導入コストは比較的安めといえます。作業内容にあわせて湿度や温度を一定にする機能を付加したものもあります。

 

◆分野によっては関連する専門用語

 

最後にクリーンルームを必要とする特定の業種に関わる用語について、見ていきましょう。

オートクレーブ
=高圧滅菌器。主に医療等を目的としてバイオロジカルクリーンルームに設置し、作業で使う道具などを滅菌処理します。

クリーン服
=クリーンスーツ、無塵服とも呼ばれる作業用のユニフォームです。表面に毛羽立ちやホコリが生じないよう、特殊な加工や縫製を施しています。クリーン服の着用が必要なクラスでの作業となれば、エアシャワーなど前工程の設備、また作業するスタッフの専門教育も行うことが大切です。

HACCP
=食品の安全性を確保するための国際的な衛生管理手法です。食品工場では製造工程管理の点で、コンタミの混入を防ぐことが重要となっており、クリーンルームのノウハウや専用機器を生かした総合的な空調設備を導入することが大切です。

GMP
=製品が安全かつ一定の品質で製造できるようにした工程管理等のルール。とくに医薬品の製造現場で用いられています。GMPが求めるものも清浄度であるため、クリーンルームとは密接な関わりがあるといえるでしょう。