製造や食品、精密機器など、さまざまな業種の製造現場で活躍するクリーンルームやクリーンブース。いずれの業種でもクリーンルーム内の空気を常にクリーンに保てるように、一般的な部屋とは違った仕様となっています。では、クリーンルームは一般的な部屋と比べてどこが違うのかがわかる3つのポイントをご紹介します。クリーンルーム選びの際にぜひご一読ください。

 

POINT1:特殊フィルター&設備で循環する空気のクリーン度が違う!

 

クリーンルームは、特殊なフィルターを通した空気を常に循環させており、目に見えないチリやホコリをも浮遊していないクリーンな空気が維持される設計になっています。

この特殊なフィルターは、家庭用空気清浄機でも耳にするHEPAフィルター(HEPA=High Efficiency Particulate Air Filterの略)が使われており、定格風量で0.3マイクロメートルの粒子を99.97%以上捕集します。

また、クリーンルームに求められるクリーンクラスによっては、HEPAフィルターより上位のクリーン度を可能とするULPAフィルター(ULPA=Ultra Low Penetration Air Filterの略、0.3マイクロメートルの粒子を99.9995%以上捕集)を使うこともあります。

一方で、クリーンクラスが低いもので良いという場合には、HEPAフィルターより下位の準HEPAフィルター(0.3マイクロメートルの粒子を95%以上捕集)が使われることもあります。

こうした説明をすると、「それなら、すべてULPAフィルターを使えばよいのでは?」と思われるかもしれません。しかし捕集率が高く、目が細かいフィルターは、空気がフィルターを通過するときに流れがさまたげられて抵抗が生じてしまうことから、空気の循環を促すファンもより性能が高いものにしなければなりません。また、フィルターの目詰まりも起きやすくなることから、目的にあったクリーンクラスの設定とフィルター選びが不可欠です。

 

POINT2:クリーンルーム内の気圧がルーム外と違う!

 

クリーンルームは、チリやホコリが浮遊する外気(汚染空気)がルーム内に流入してコンタミが混入することがないよう、常にルーム内を陽圧に保っています。

この陽圧とは、気圧が高い状態のことを指します。気圧は水と同様に、高いところから低いところへ流れるため、クリーンルーム内の気圧を高めることによって、ルーム外の空気が混入しないようにしているのです。また、コンタミ混入の原因であるチリやホコリをクリーンルーム外へ排出する機能もあります。

クリーンルームを含め、複数の部屋を持つ大きな工場などでは、クリーン度が一番高い部屋が圧力も一番高くなるよう、圧力勾配を計算されて工場全体を設計するようです。

ちなみに、クリーンルームの室内と室外の気圧差は、5~15 ヘクトパスカル程度を維持することが望ましいといわれています。これよりも気圧差が小さいと、汚染空気がクリーンルーム内に持ち込むリスクが発生するのです。一方で、気圧差が大きすぎると部屋を仕切る扉の開閉が困難になったり、作業員に不快感が生じたりするなどの問題が発生します。

そのため、クリーンルームの多くは陽圧ダンパー(リリーフダンパー)を設置して、一定の差圧以上になったら室内から外へ空気を逃がし、差圧が一定になるよう管理・調整をしています。これを差圧管理といいます。

また、気圧とともに温度や湿度をが一定になるよう管理をする場合もあります。これはコンタミ防止という機能性だけでなく、製品の品質保持などを目的としたケースです。

適正な差圧調節を維持することは、クリーンルームの基本的かつ重要なポイントです。クリーンルームの規模が大きくなればなるほど、差圧管理は難しくなります。そのため、クリーンルームとともに簡易クリーンブースを設置し併用するケースもあります。

 

POINT3:ルーム内の服装、使用する道具が違う!

 

クリーンルームは、クリーンクラスに対応した設備を導入することが不可欠ですが、あわせてクリーンルーム外からチリやホコリを持ち込まない、あるいはクリーンルーム内でチリやホコリを浮遊させないよう、作業者も工夫することがコンタミ防止をより確かなものにします。具体的には、身につける服装や使用する道具にも細心の注意を払うべきでしょう。

まずは服装です。これは作業員自身がチリ・ホコリの発生源とならないよう、全身を覆うクリーンウェア(防塵服)とマスク・手袋を着用します。靴下も十分な長さのものを着用し、目の部分のみが露出している状態が望ましいでしょう。

また、異物混入の原因となるため、作業員はメイク・ネイル、アクセサリーの着用を禁止される事業所も少なくありません。同様に、クリーンウェアの内側に身に着ける服についても、ボタンやスパンコールの付いたものは不可とされることがあります。

さらにクリーンルームは常に空気を循環しているため、湿度が低く、静電気が発生しやすい環境といえます。静電気によって帯電すると、空気中のホコリを引き寄せてしまいますから、静電気を起こしやすいセーターの着用は避けたいものです。

次に、使用する道具です。そもそもルーム内には、不必要なものを持ち込まないのが鉄則です。その上で、必要な道具についても、チリやホコリの原因にならないものを選ぶべきでしょう。

たとえば紙は、短い繊維や、白く見せるための顔料粉末が発塵の原因となるため、普通紙を使うことはできません。クリーンルームでは、長い繊維をしっかりと絡め、さらに樹脂に浸して接着性を高めたクリーンペーパー(無塵紙)を使用します。

また、筆記具についても、細かな粉末が発生する鉛筆やシャープペンシルは使用できません。代わりにボールペンを使用するようにしましょう。

 

まとめ

 

ここまでの通り、クリーンルームは一般的な部屋とは異なる空間にするため、設備を揃え、システムを構築し、さらに作業員教育を行うことが大切です。それらのノウハウを総合的にもつ専門業者と相談をしつつ、確実に目的を達せられるクリーンルームを設置していくことが大切でしょう。